世界が小さくなっている現代、地域分散投資の概念は不要。
そう私は考えた。
以下にその背景を記す。
地域分散投資と海外売上高比率
投資においては分散の重要性が説かれている。
そんなことは当たり前であり、企業も同様に考えているはずだ。
「ジェトロ世界貿易投資報告2016年版」によると、15年度の日本企業の海外売上高比率は58.3%となり、過去最高を更新している。
日本企業に勤めていたり日本企業へ投資していたりしても、その売上の半分以上は国外からのものだ。
あなたの給料は、世界中からの利益の集計であるといっても過言ではない。
では世界で最も稼げる市場であるアメリカに本社を置く企業の海外比率はどうだろう?
2015年におけるS&P500企業の海外売上高比率は44.3%となっている。
すでに各国企業は売上高を分散させているわけ。
この場合に、国際分散投資という概念は必要なのだろうか?
米国株代表:S&P500の海外売上高比率は高い
海外売上高推移は40~50%、つまり地域分散は既にされている
以下はS&P500構成銘柄の、海外売上高推移を示している。
アメリカ企業の売上は、40~50%程度が米国外からである。
米国株に投資しているといっても、実はその売上の源泉はアメリカ以外のものを多く含んでいると考えてよい。
国別売上高比率2015年:売上高が各国に分散されている
S&P 500R 2015: Global Salesより
売上国 | 割合 |
アメリカ | 55.65% |
ヨーロッパ | 7.79% |
アジア | 6.77% |
アフリカ | 3.16% |
南アメリカ | 2.91% |
北アメリカ(除米国) | 1.82% |
オーストラリア | 0.08% |
その他 | 21.82% |
”その他”が21.8%と米国外では最大比率となっている。
これは詳細にブレイクダウン出来ない or 公表されていないというのが理由だろう。
つまりEUやアジアの比率は上記より更に大きいと考えてよい。
いずれにせよ、S&P500構成銘柄の米国売上比率は半分ちょっとにしか過ぎない。
そして売上高は世界各地に広く分散されている。
多国籍企業の、米国内売上高比率
代表的な3つのセクターに所属する優良企業の、米国売上高比率をピックアップした。
生活必需品セクター銘柄は、売上高が世界分散されている
- プロクター&ギャンブル:41.4%
- ユニリーバ【UL】 :32.5%
- アンハイザーブッシュインベブ:34.5%
- コカ・コーラ 【KO】 :24.4%
どの企業がアメリカ本社なのか分かったものではない。
ユニリーバ【UL】は英国、アンハイザー・ブッシュ・インベブはベルギー企業であるが多国籍企業であり、米国売上高比率は高い。
ヘルスケアセクター銘柄も、事業は地域分散がされている企業
- ノバルティス:37%
- ファイザー :49.9%
いずれもヘルスケアセクターのトップを争う企業である。
売上高はNo.1/2であり、時価総額ランキングでもジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】に次いで2位・3位なっている。
ノバルティスは米国売上高37%のスイス企業。
多国籍企業のひとつである。
石油セクターは世界各地で稼いている
- エクソン・モービル:33.6%
- BP :37.6%
オイルメジャーは世界各地で稼いでいる。
どこの国に本社を置いているのか?という視点は不要だ。
米国株大手銘柄は既にグローバル企業であり地域分散不要
もちろん、ウェルズファーゴ【WFC】、ベライゾン【VZ】やアルトリア【MO】などの米国100%企業は少なからずある。
しかしながら米国のみならず日本企業ですら、海外売上高比率が高くなっているのが事実。
すでに世界は一つになりつつあり、地域分散投資の概念は不要だ。
おまけに世界各国の株式市場間で、リターンの相関性が高まっている。
たとえば米国発のリーマンショック時には世界同時株安が発生した。
ほとんど関係のないと思える国やセクターも暴落した。
非米国を対象としたETFを見ても同様である。
市場間で相関性が高いのなら、わざわざ分散をする意義が見いだせない。
もはや投資における地域配分は時代遅れであり、わざわざ検討する必要なし。
ならば株主還元に手厚く、成熟した市場のアメリカへ投資すればよい。
よって私はアメリカ株を中心に資金投下する。
それが世界分散投資にも繋がっていると考えているからだ。
ちなみに米国株投資ならマネックス証券がおススメですよ。
あなたは地域分散投資についてどうお考えですか?
See you!
■グローバル企業への投資は世界分散とほぼ同義、関連記事紹介
プロクター&ギャンブルはグローバル企業、米国株だが銘柄内で地域分散されていると考えられる
P&Gのライバル、ユニリーバも地域分散された事業展開をしている。とくに新興国に強みあり
コメント
はじめまして。
米国企業の売上は海外も多いので、世界分散できるという考え方は、10数年前の澤上篤人氏の持論と同じです。(米国→日本に置き換え)
私は澤上さんの考えに納得し、日本株にしか投資しなかったのですが、失敗だったと思っています。
私は、はちどうきゅうどうさんのお考えには、賛同するところも大いにありますが、やはり株式市場や通貨の分散から、米国以外の先進国や新興国にも投資しています。
米国外に成長企業が現れる可能性もあると思います。インドや中国も侮れないかも!?
はちどうきゅうどう様、くすのき様、おはようございます。
債券やREITの場合は地域や通貨の分散は有効性が高いと思いますが、株式投資の場合、米国の優位はしばらく動きそうもないと思います。
理由①コーポレートガバナンスがしっかりしている。中国やインドのガバナンスコードが米国に追いつくにはあと100年以上は掛かりそうです。
理由②株主利益を重視する伝統と文化が定着している。
理由③株主利益と経済や企業の成長は重なる部分もありますが、そうでない部分もあるから。
理由④経営の効率化。米国の高いROEとEPS、イノベーションの発信力に他国が追いつくには、途方もない教育コストと努力と時間が必要かも知れません。
以上の理由から、私ははちどうきゅうどう様に1票!
将来のことは、誰にもわかりませんが?
くすのきさん、マッキーさん、
コメントありがとうございます。
市場の成熟度を考えると米国の優位性はまだまだ揺るがないですよね。
中国やインド、その他の国の成長企業がどこに上場したいか、どの通貨で売上を得たいかを考えてみると、ドルとアメリカ市場はまだ当分の間は魅力的だと思います。
通貨の分散という観点からは給与やその他収入を円で得れている日本人が、ドルでアメリカ株に投資できる環境はとても素晴らしいですね。