たばこは健康に有害であることが分かっています。
多くの疾患のリスクファクターに、たばこや喫煙歴が挙げられています。
一方でたばこからの税収は、多くの国の財政を助けていますね。
いっそのこと、「たばこをもっと値上げしてしまえばいいのでは」と思ったりします。
- 喫煙者が減る
- 税収は増える
単純に考えるとこうなりそうですからね。
そんな疑問を解決する研究結果がBMJという医学雑誌で公表されたので紹介します。
もしもタバコを50%値上げしたら健康と経済はどうなる?ということです。
結論から言うと
- 低所得者層の喫煙者数は減る
- とくに低所得者層の生存期間が延びる
- 税収は増える
引用論文>>>Global Tobacco Economics Consortium,: BMJ 2018;361:k1162
おりしもフィリップモリス(PM)の暴落前後で公表された研究結果。
フィリップモリス(PM)の株価チャート
たばこの値上げは健康に有益
概要は以下の通りです。
研究対象
- 中所得13ヵ国の総計20億人のうち男性喫煙者5億人を対象
研究方法
- 所得を5分類し、タバコ価格の値上げによる健康、財政、税に関する利益を評価
主要評価項目
- 獲得生存年、回避可能医療費、高額医療支出を回避する男性数、貧困度、および所得分類ごとの追加税収
結果
- タバコの50%値上げが約4億5,000万人の生存年数を延長、低所得層に有益
ちなみに我が国日本はまだ中所得国ではないので本研究の対象とはなっていません。
対象となった国は、インド、インドネシア、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、中国、メキシコ、トルコ、ブラジル、コロンビア、タイ、チリです。
参考>>>アジアの国別年収ランキング
たばこの値上げは生存期間延長に繋がる可能性
縦軸は生存期間延長、横軸を所得の5分位階級として、たばこ価格値上げの影響を見ています。(本研究結果は赤色の50%値下げ)
右肩下がりのグラフとなっています。
つまり低所得者層の方がたばこ値上げによる生存期間延長の影響が大きい事を表しています。
たばこの値上げによって
- 喫煙本数が減る
- 喫煙者数が減る
ことが大きいでしょう。
ちなみに所得下位層の喫煙者が禁煙によって得る平均獲得生存年は、所得上位層の5.1倍でした。(1.46年 vs.0.23年)
この結果をもとに本研究では、たばこ50%値上げは低所得者層の健康・生存延長により有益であろうと結論付けています。
参考>>>長期投資と年齢別死亡率
たばこの値上げは医療費抑制につながる可能性
縦軸は高額医療費の抑制金額、横軸を所得の5分位階級として、たばこ価格値上げの影響を見ています。(本研究結果は赤色の50%値下げ)
いずれの所得層においても、たばこ値上げは医療費抑制につながるとわかります。
その影響は低所得者層により大きくなっています。
そして、回避可能な医療費1,570億ドルのうち、所得下位層が回避可能な医療費は所得上位層と比べて4.6倍に上ることが予測されました。(460億ドル vs.100億ドル)。
たばこの値上げは税収増につながる可能性
縦軸は追加税収の金額、横軸を所得の5分位階級として、たばこ価格値上げの影響を見ています。(本研究結果は赤色の50%値下げ)
生存期間、医療費抑制額のグラフとは異なります。
右肩上がりとなっていますからね。
追加税収は1,220億ドルと予測されました。
そのうち所得上位層が納める金額は、受ける恩恵が少ないにもかかわらず、所得下位層の2倍に上ることが予測されたのです。
たばこ50%値上げによる所得下位層への影響
- 31%が生存年数の延長を獲得
- 29%が疾患ごとの医療費や高額医療支出を回避可能
- 追加税収の支払いは10%のみ
たばこ値上げの研究結果をみて思うこと
タバコの値上げは、所得上位層20%よりも所得下位層20%に対して、健康や財政面の利益を提供するとわかりました。
日本においても、たばこ価格は徐々に値上がりしています。
今回の研究結果をみて、「もっと値上げしてもいいのでは?」と個人的に思います。
私は非喫煙者ですからね。
もしあなたがスモーカーなら、喫煙による健康や経済について思いを巡らせてはいかがでしょうか?
余計なお世話かな。
以上、「たばこの50%値上げは健康・経済に有益か?」でした。
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たばこの世界販売数は減少傾向です。しかし販売額は上昇しています。たばこは世界中で値上げされているのですね。
たばこ株は莫大なキャッシュフローを有しています。配当金などの株主還元が大きい銘柄ばかりです。
日本が高所得国というわけではありません。
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