投資リターンの90%はアセットアロケーションで決まると言われている
投資では資産配分比率・アセットアロケーションが大切だと説かれます。
たとえば、バートン・マルキール著「ウォール街のランダム・ウォーカー」。
以下のように資産配分比率の重要性が言及されています。
ライフワークとして様々な試算のリターンの長期的な計測を行っているロジャー・イボットソンによれば、投資の総リターンの90%は、投資家の選択したアセット・ミックスによって決まるという
しかしどうやら1986年のBrinsonらの研究が、運用成果の大半はアセットアロケーションで説明できるとしたはじめての論文だったようです。
イボットソンとブリンソン、いずれの研究結果ともに知っておいて「損」はないでしょう。
アセットアロケーションがリターンの9割を説明できるとした論文
1986年の報告です。
医薬品で例えるなら降圧剤ではカプトプリルなどのACE阻害剤、オンコロジーならシスプラチンの時代といった感じでしょうか。
PDF論文に風情がありますね。
アセットアロケーションが重要なのは、年金ポートフォリオを対象にした研究
1970年~80年代にかけての米国年金ファンドが研究対象となっています。
まだインデックスファンドが存在しない時代です。
- 対象;米国の91の年金基金
- 期間;1973年~1985年
- 方法;ポリシーアセットアロケーション(事前に決めた資産配分比率)が、上記年金基金のリターンの変動をどれだけ説明できるのかを解析した
年金基金ポートフォリオの資産配分比率をみると、株式比率が高くなっていました。
- 株式;57.5%
- 債券;21.4%
- 現金同等物;12.4%
- その他;8.5%
タイミング投資と銘柄選択の有無によって、クワドラントに分類してシミュレーション
シミュレーションの分類は以下の通りの4パターンに分けて比較されています。
- 仮想①(銘柄選択なし+タイミング投資なし)
- 仮想②(銘柄選択なし+タイミング投資あり)
- 仮想③(銘柄選択あり+タイミング投資なし)
- 実際の年金基金のリターン(銘柄選択あり+タイミング投資あり)
アクティブ運用より、パッシブ投資のリターンが高かった
平均の年率リターン結果がこちら。
- 仮想①;10.11%(銘柄選択なし+タイミング投資なし)
- 仮想②;9.44%(銘柄選択なし+タイミング投資あり)
- 仮想③;9.75%(銘柄選択あり+タイミング投資なし)
- 実際の年金基金のリターン;9.01%(銘柄選択あり+タイミング投資あり)
年金基金ファンドの投資収益は十分に高いように見えます。
しかし比較してみると、最初からパッシブ投資をしていた方がもっとリターンが良かったのです。
リターンの93.6%を、政策ポートフォリオで説明できる
これが、「アセットアロケーションがリターンの90%を決める」と言われる背景となったデータです。
米国の91の年金基金を対象に1973年から1985年の四半期リターンの変動がポリシーアセットアロケーション(事前に決定したアセットアロケーション)のリターンの変動によって、93.6%説明できることを示しています。
- アセットアロケーションが
- ポートフォリオの四半期リターンの変動性を
- 93.6%説明できる
この結果が、論文のタイトルであるDeterminants of Portfolio Performance(パフォーマンスの決定要因)とあわさって、
「投資リターンの9割はアセットアロケーションで決まる」
と言われているのだろうと推測します。
もちろん論文だけでは腹落ちしきれません。
それでもアセットアロケーションの重要性を説いた初めての研究結果だということなので、これでヨシとします。
いずれにせよ、投資をするならば、資産配分比率について考えておく必要あるのです。
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年齢とともにアセットアロケーションは変えるのが吉だといわれていますね
株式という枠組みではなく、より大きな視点で資産全体を俯瞰するのがよいのかもしれません
アセットアロケーションでは、持ち家や人的資産など、どのアセットを対象とするのかは重要な視点だと思います
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