米国バイオ企業大手、ギリアドサイエンスの新型コロナ治療薬治験は6000例を対象に
ヘルスケアセクター勤務者として、驚きのニュースを見ました。
米ギリアド、新型コロナ薬治験を拡大 2倍超の6000人対象
治療薬の治験で6,000例も必要なのはなぜ?って感じ。
ふと思いついたのが
- 有効性が低いのか?
- 薬剤アクセスの拡大のためか?
- それ以外に何かあったのか?
気になったので、ブログに記録しておきます。
ちなみに被験者数を多く必要とするということは、化合物の有用性が限定的である可能性を示唆しています。
たとえば抗インフルエンザ治療薬のタミフル。
インフルエンザ罹病期間の短縮効果の他、重症度の低下、ウイルス放出期間の短縮、体温の回復期間の短縮が認められて承認されています。
その治験時の症例数は約600例でした。
ギリアドサイエンスの「レムデシビル」は6,000例。
まさにけた外れの症例数なわけです。
ロシュ・中外製薬の抗インフルエンザ薬 タミフルの海外治験は600例
17.1.2 海外第III相試験(治療試験)
インフルエンザ罹病期間(時間)薬剤 投与期間 症例数注2) インフルエンザ罹病期間中央値(95%信頼区間) オセルタミビルリン酸塩注1) 5日間 301例 78.2時間注4)(72.0-88.0) プラセボ 5日間 309例 112.5時間(101.5-119.9) 注4)p<0.0001(プラセボとの比較)
ギリアドサイエンスのレムデシビルは、アクセス拡大プログラムへ
ロイター通信や、その他日本語ニュースでは、ギリアドサイエンスの治験症例数が6,000例に増えた理由まで言及されたものは見つかりませんでした。
他方でロイター本家では、しっかりと「アクセス拡大プログラム」と明記されていました。
The company has previously said it was shifting from a system of individual compassionate-use requests to expanded access programs.
【GILD】ギリアドの抗ウイルス薬「レムデシビル」臨床試験一覧 4月18日時点
レムデシビルの臨床試験は、検索可能な限りで12試験がありました。
既存治療と比較したフェーズ3試験のPrimary completion dataの多くが3月~5月となっています。
緊急事態だけあり、治験スタートからそう時間がかからないうちに、結果の第一報が出てきそうです。
2Qにはレムデシビルの有用性のトップラインがプレスリリースされると予想されます。
Rank | Status | Sponsor/Collaborators | Phases | Enrollment | Start Date | Primary Completion Date |
1 | Suspended | Capital Medical University|Chinese Academy of Medical Sciences | Phase 3 | 308 | 12-Feb-20 | 10-Apr-20 |
2 | Terminated | Capital Medical University | Phase 3 | 237 | 6-Feb-20 | 30-Mar-20 |
3 | Recruiting | Gilead Sciences | Phase 3 | 6000 | 6-Mar-20 | May-20 |
4 | Recruiting | Gilead Sciences | Phase 3 | 1600 | 15-Mar-20 | May-20 |
5 | Available | Gilead Sciences | ||||
6 | Recruiting | National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID) | Phase 3 | 440 | 21-Feb-20 | 1-Apr-23 |
7 | Available | U.S. Army Medical Research and Development Command | ||||
8 | Recruiting | Oslo University Hospital | Phase 2|Phase 3 | 700 | 28-Mar-20 | Aug-20 |
9 | Recruiting | Institut National de la Santテゥ Et de la Recherche Mテゥdicale, France | Phase 3 | 3100 | 22-Mar-20 | Mar-23 |
10 | Recruiting | Groupe Hospitalier Pitie-Salpetriere|CMC Ambroise Parテゥ | 1000 | 17-Mar-20 | 1-Jan-21 | |
11 | Enrolling by invitation | The Camelot Foundation | Phase 2|Phase 3 | 500 | 11-Apr-20 | 11-Oct-20 |
12 | Recruiting | University of Kansas Medical Center | Phase 1 | 50 | 25-Mar-20 | Sep-20 |
引用;Clinical trial gov(方法;remdesivir+covidにて検索)
ギリアドの SIMPLE 試験について
最後に、6,000例の症例を登録予定であるギリアドサイエンスのSIMPLE試験について、プレスリリースを転記しておきます。
ギリアドの SIMPLE 試験とは、2 件の無作為化、非盲検、国際共同第 III 相臨床試験で構成されるプログラムで、remdesivir の 2 種類の静脈内投与レジメンの安全性と有効性を評価します。
第 1 段階では、COVID-19 陽性が確認された感染拡大国の入院患者およそ 1,000 人を対象とする予定です。SIMPLE 試験プログラムの 2 件の試験のうち、1 番目の試験では、重度の COVID-19症状を呈する患者を対象に、5 日間および 10 日間の remdesivir 静脈内投与レジメンの安全性および有効性を評価します。
2 番目の試験では、中等度の COVID-19 症状を呈する患者を対象に、標準治療に加えて 5 日間および 10 日間の remdesivir 静脈内投与レジメンを併用した群の安全性および有効性を、標準治療のみの群と比較して評価します。
remdesivirがCOVID-19の治療薬として有効でかつ安全性も担保され、コロナ感染で苦しむ患者さんのためになることを祈願しています。
著者はGILD株を保有していません。この記事は自分自身の備忘録として記述したもので、読者に株のGILD投資を推奨することを目的として書いていません。投資判断はご自身で行ってください。
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